MVR-Ex RENISHAWタッチプローブ キャリブレーション手順(MVREx FANUC31i)

1. キャリブレーションの手順

(1) プローブ本体の組み付け

①BT50ホルダーと本体の仮組み付け

センサー本体とBT50ホルダーの中心をおおよそ合わせて仮締めします。
(主軸定位置停止状態でレニショーマークが正面になるようにすると綺麗です)

②スタイラスの取り付け

50mmまたは100mmのプローブが付属しています。
緩まないように締め付けてください。

③バッテリーの取り付け

単三型アルカリ乾電池を2本使用します。
電池BOXを開ける前に、ゴミやクーラントなどの付着が無いように清掃をしてください。
バッテリーをセットする際には電極の向きに注意してください。
(バッテリーケースに表示があります)

(2) スタイラスの芯出し

・スタイラス先端の振れが最小になるように、次の①~④の手順で芯出しをしてください。

①主軸を手で回しながら振れ量を読み取り、センサー本体の4方向のセットビスで調整してください。
 6角レンチを2本使用して、押し引きしながら調整します。

②ある程度芯が出たら、ホルダー側のセットビスを締めます。

③再度、本体側のセットビスとホルダー側のセットビスを締め込みながら、最終的に振れが0.01mm以内になるように調整してください。

④芯出しが完了したら主軸からセンサーを外してマガジンに取り付けてください。

(3) 基準とするリングゲージと座標値のセット

振り回し治具を用いてリングゲージ中心X/Y座標値を求めます
基準テストバーを用いてテーブル上面までのZ座標値を求めます

G54に設定した座標値(X, Y, Z, W)をメモしてください。
※座標測定後、芯出し工具は主軸から取り外してください。

(4) 芯ずれデータとキャリブレーションデータの測定

手動で求めた座標値に対して、自動計測で得た測定結果の誤差が最小になるようにキャリブレーション値(補正値)を調整していきます。
キャリブレーション値は、各計測項目ごとに求めることにより、より正確な計測結果を得られます。

本手順書ではキャリブレーション方法の一例を示したもので、使用頻度の多い計測項目について説明しています。
そのほかの計測項目については、必要に応じて実施ください。

ここで紹介する参考プログラムの測定項目は以下の内容です。
詳細は各項をご参照ください。

自動計測用キャリブレーション
① 自動計測 内径計測
② 自動計測 面計測Z
③ 自動計測 面計測X−側アプローチ(X[−] → X[+]へ移動)
④ 自動計測 面計測X+側アプローチ(X[+] → X[−]へ移動)
⑤ 自動計測 面計測Y−側アプローチ(Y[−] → Y[+]へ移動)
⑥ 自動計測 面計測Y+側アプローチ(Y[+] → Y[−]へ移動)

簡易芯出し用キャリブレーション
⑦ 簡易芯出しX/Y芯ずれ
⑧ 簡易芯出しZ 工具長
⑨ 簡易芯出し 基準面芯出し X−側アプローチ(X[−] → X[+]へ移動)
⑩ 簡易芯出し 基準面芯出し X+側アプローチ(X[+] → X[−]へ移動)
⑪ 簡易芯出し 基準面芯出し Y−側アプローチ(Y[−] → Y[+]へ移動)
⑫ 簡易芯出し 基準面芯出し Y+側アプローチ(Y[+] → Y[−]へ移動)
⑬ 簡易芯出し ライトアングル用キャリブレーション設定値について

2. 自動計測用キャリブレーション

自動計測結果は下記のように、計測項目に応じてコモン変数に保存されます。

計測種類/Gコード/マクロ番号

プローブ情報  G220  (P9101)
内径計測    G221  (P9201)
外形計測    G222  (P9211)
芯間計測    G223  (P9221)
直交座標計測  G224  (P9231)
溝幅計測    G225  (P9241)
厚さ計測    G226  (P9251)
高さ計測    G227  (P9261)
傾斜角計測   G228  (P9271)
面計測     G229  (P9291)
内径芯出し   G230  (P9301)
外径芯出し   G231  (P9361)
基準面計測補正 G232  (P9311)

参考プログラム・解説

立主軸(DUMMY PLATE )でのキャリブレーションの参考です。
この参考プログラムではコモン変数#550~#558を使用していますが、不都合がある場合は、適宜変更してください。
また、直接プログラム内に数値を設定して頂いてもかまいません。
コモン変数にデータを格納するメリットとしては、後日プローブが破損した場合や、測定結果を調整する際に、コモン変数の値を変更することで容易に調整することができます。

センサーをT50として工具長補正はH50を使用します。
あらかじめH50のオフセットにセンサーの仮工具長を入力してください。
(100mmのスタイラスをセットした場合、工具長は約220mmです)

※#551~#558の値を求めていきますが、最初は不明の為、上記のように設定してください。
設定後、M0(DATA.KAKUNIN) までメモリー運転をして、コモン変数に数値を記憶させてください。

① 自動計測 内径計測

芯ずれデータX/Yと内径計測のキャリブレーション値の設定

<補正要領>
N100からメモリー運転し、内径計測後M0停止まで実行させてください。
NC画面の“コモン変数”を確認してください。(計測結果が保存されています)
#115,#116の符号を反転した数値を#551,#552に設定します。

プログラム先頭部分のデータ設定の所を書き換えてもOKです。
(その場合、再度コモン変数を読み込ませて下さい)

<例>
 #115→0.021
 #116→−0.013  の場合
 #551=−0.021
 #552=0.013 と設定します

 #118→0.086 の場合
 #554=0.043 と設定します(#118の半分の値を設定します)

コモン変数に設定後、再度N100から実行して測定結果(#115,#116,#118)を確認してください。
結果の誤差値をさらに反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

②自動計測 面計測Z

センサー工具長の設定

<補正要領>
N200からメモリー運転し面計測後、M0停止まで実行させてください。
NC画面の“コモン変数”を確認してください。(計測結果が保存されています)
#117の値が測定誤差です。
#117の値をオフセットH50と#553に反映してください。

<例>
 #117=−0.125 の場合
 H50 : 219.875 (仮工具長が220mmの場合、[220−0.125=219.875])
 #553=219.875 と設定

設定後、再度N200から実行して測定結果(#117)を確認してください。
結果の誤差値をさらに反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

③自動計測 面計測X−側アプローチ

面計測X−側アプローチ(XマイナスからXプラスへ移動)
キャリブレーション値設定

<補正要領>
N300からメモリー運転し面計測後、M0停止まで実行させてください。
NC画面の“コモン変数”を確認してください。(計測結果が保存されています)
#115の値が測定誤差です。
#115の値を#555に設定してください。

<例>
 #115=0.044 の場合
 #555=0.044 と設定

設定後、再度N300から実行して測定結果(#115)を確認してください。
結果の誤差値をさらに反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

④自動計測 面計測X+側アプローチ

面計測X+側アプローチ(XプラスからXマイナスへ移動)
キャリブレーション値設定

<補正要領>
N400からメモリー運転し面計測後、M0停止まで実行させてください。
NC画面の“コモン変数”を確認してください。(計測結果が保存されています)
#115の値が測定誤差です。
#115の値がマイナスで出力された場合、プラスの値を#556に設定してください。

<例>
 #115=−0.042 の場合
 #556=0.042 と設定

設定後、再度N400から実行して測定結果(#115)を確認してください。
結果の誤差値をさらに反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

⑤自動計測 面計測Y−側アプローチ

面計測Y−側アプローチ(YマイナスからYプラスへ移動)
キャリブレーション値設定

<補正要領>
N500からメモリー運転し面計測後、M0停止まで実行させてください。
NC画面の“コモン変数”を確認してください。(計測結果が保存されています)
#116の値が測定誤差です。
#116の値を#556に設定してください。

<例>
 #116=0.039 の場合
 #557=0.039 と設定

設定後、再度N500から実行して測定結果(#116)を確認してください。
結果の誤差値をさらに反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

⑥自動計測 面計測Y+側アプローチ

面計測Y+側アプローチ(YプラスからYマイナスへ移動)
キャリブレーション値設定

<補正要領>
N600からメモリー運転し面計測後、M0停止まで実行させてください。
NC画面の“コモン変数”を確認してください。(計測結果が保存されています)
#116の値が測定誤差です。
#116の値がマイナスで出力された場合、プラスの値を#558に設定してください。

<例>
 #116=−0.040 の場合
 #558=0.040 と設定

設定後、再度N600から実行して測定結果(#115)を確認してください。
結果の誤差値をさらに反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

3.簡易芯出し用キャリブレーション

簡易芯出しキャリブレーションの流れ

下の図は一例を示したものです。
表の座標はこの後の参考プログラムの例に用いていますので、併せてご覧ください。

φ100.020
リングゲージ
G54 (計算値)
X
G54 (計算値)
Y
G55 (測定値)
X
G55 (測定値)
Y
XY座標-2000.000-1500.000-2000.015-1500.020
Z座標-660.000-660.125
(X- → X+ ) ①-1949.990-1500.000-1949.932-1500.000
(X+ → X- ) ②-2050.010-1500.000-2050.066-1500.000
(Y- → Y+ ) ③-2000.000-1449.990-2000.000-1449.946
(Y+ → Y- ) ④-2000.000-1550.010-2000.000-1550.055

※簡易芯出しのキャリブレーション値入力に関して

簡易芯出し時のキャリブレーションの値を入力する際は、下記マクロプログラムO9452のプローブ情報を設定する必要があります。
O9452はプログラム一覧表 →“LIBRALY”のフォルダーに保存されています

<プローブ情報設定>

G65 P9460 Xx Yy Zz Ii Jj ; ( ダミープレート用 )

9000番台のプログラムを編集するためにはパラメータ変更を行わなければなりません。
以下にパラメータ変更手順を示します。

<パラメータ変更手順>
操作盤のOFSボタン→NCセッティング→パラメータ書換(0:不可1:可)に1を入力してパラメータ書換を“ 可 ”にしてください。
次に、SYSTEMボタン→NC設定→NCパラメータ→ 3202 #4 NE9 1→0に(プログラム編集を 0:禁止しません 1:禁止します) 変えることで、O9000~O9999のプログラムが編集可能となるため、O9452が編集可能となります。

簡易芯出しのキャリブレーションプログラム編集)を終えましたら、先の手順でパラメータを元に戻してください。
NCアラームが発生しますが、“RESET”で解除してください。

プログラム編集後は必ず“編集禁止”に戻してください
パラメータを戻さずに他の9000番台のプログラムを誤って編集すると機械が正常に動作しなくなる可能性があります。
十分注意して編集をお願いいたします。

⑦簡易芯出しX/Y芯ずれ

<補正要領>
コモン変数#550にリングゲージ内径を入力します。
N1000からメモリー運転し位置決め後(M0停止)、ハンドルでZ軸を降ろしプローブ先端がリングゲージ内を測定できるようにしてください。
再び、メモリー運転で計測を開始して計測後、M0停止まで実行させてください。
G54の機械座標(リングゲージをスモールテスターで計測した座標)と、
G55の機械座標(簡易芯出しにより求めた座標)を確認し、誤差量を計算して下さい。
その誤差量をO9452内のG65P9451プローブ情報に反映します。
再度計測し、誤差が最小になるように補正値を調整してください。

<例>
G54座標のX座標が−2000.000 Y座標が−1500.000で、
G55座標のX座標が−2000.015 Y座標が−1500.020の場合。
O9452 プローブ情報G65P9451内のXに0.030 Yに0.020を入力します。
計算例 :[G54の座標]−[G55の座標]=補正値 [−2000.000]−[−2000.015]=0.015
計算例 :[G54の座標]−[G55の座標]=補正値 [−1500.000]−[−1500.020]=0.020
結果の誤差値を反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

O9452内
G65P9451S1X0.015Y0.020Z220.000D6.F50.R1000.A5.B5.I0Q4.

⑧簡易芯出しZ 工具長

<補正要領>
N1100からメモリー運転し位置決め後(M0停止)、ハンドルでZ軸を降ろしプローブ先端が計測したい面から30mm以内になるようにしてください。
再び、メモリー運転で計測を開始して計測後、M0停止まで実行させてください。
G54の機械座標(基準テストバーで計測した座標)と、G55の機械座標(簡易芯出しにより求めた座標)を確認し、誤差量を計算して下さい。
その誤差量をO9452内のG65P9451プローブ情報に反映します。
再度計測し、誤差が最小になるように補正値を調整してください。

<例>
G54座標のZ座標が−660.000で、
G55座標のZ座標が−660.125の場合。
O9452プローブ情報G65P9451内のZの値に対して0.125を反映します。
計算例 :[G55の座標]−[G54の座標]=補正値 [−660.125]−[−660.000]=−0.125
220.000+[−0.125]=219.875
結果の誤差値を反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

O9452内
G65P9451S1X0.015Y0.020Z219.875D6.F50.R1000.A5.B5.I0Q4.

※簡易芯出し実行前にO9452プローブ情報G65P9451のZに仮工具長を入力しておいてください。
(100mmのスタイラスをセットした場合、工具長は約220mmです)

⑨簡易芯出し 基準面芯出し X−側キャリブレーション

<補正要領>
コモン変数#550にリングゲージ内径を入力してください。
N1200からメモリー運転し位置決め後、ハンドルでZを降ろしプローブ先端がリングゲージ内を測定できるようにしてください。
再び、メモリー運転で計測を開始して計測後、M0停止まで実行させてください。
G54の機械座標(リングゲージをスモールテスターで計測した座標)と、G55の機械座標(簡易芯出しにより求めた座標)を確認し、誤差量を計算して下さい。
その誤差量をO9452のG65P9460 DMP用キャリブレーションの設定に反映します。
再度計測し、誤差が最小になるように補正値を調整してください。

<例>
G54座標のX座標が−1949.990で、
G55座標のX座標が−1949.932の場合。
O9452のG65P9460内Iに0.058を入力します。
計算例 :[G55の座標]−[G54の座標]=補正値 [−1949.932]−[−1949.990]=0.058
結果の誤差値を反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

O9452内
G65P9460X0Y0Z0I0.058J0(T1000.DMP.CALIBRATION.)

⑩簡易芯出し 基準面芯出し X+側キャリブレーション

<補正要領>
コモン変数#550にリングゲージ内径を入力してください。
N1300からメモリー運転し位置決め後、ハンドルでZを降ろしプローブ先端がリングゲージ内を測定できるようにしてください。
再び、メモリー運転で計測を開始して計測後、M0停止まで実行させてください。
G54の機械座標(リングゲージをスモールテスターで計測した座標)と、G55の機械座標(簡易芯出しで求めた座標)を確認し、誤差量を計算して下さい。
その誤差量をO9452のG65P9460 DMP用キャリブレーションの設定に反映します。
再度計測し、誤差が最小になるように補正値を調整してください。

<例>
G54座標のX座標が−2050.010で、
G55座標のX座標が−2050.066の場合。
O9452のG65P9460内Xに0.056を入力します。
計算例 :[G54の座標]−[G55の座標]=補正値 [−2050.010]−[−2050.066]=0.056
結果の誤差値を反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

O9452内
G65P9460X0.056Y0Z0I0.058J0(T1000.DMP.CALIBRATION.)

⑪簡易芯出し 基準面芯出し Y−側キャリブレーション

<補正要領>
コモン変数#550にリングゲージ内径を入力してください。
N1400からメモリー運転し位置決め後、ハンドルでZを降ろしプローブ先端がリングゲージ内を測定できるようにしてください。
再び、メモリー運転で計測を開始して面計測後、M0停止まで実行させてください。
G54の機械座標(リングゲージをスモールで計測した座標)と、G55の機械座標(簡易芯出しにより求めた座標)を確認し、誤差量を計算して下さい。
その誤差量をO9452のG65P9460 DMP用キャリブレーションの設定に反映します。
再度計測し、誤差が最小になるように補正値を調整してください。

<例>
G54座標のY座標が−1449.990で、
G55座標のY座標が−1449.946の場合。
O9452のG65P9460内Jに0.044を入力します。
計算例 :[G55の座標]−[G54の座標]=補正値 [−1449.946]−[−1949.990]=0.044
結果の誤差値を反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。

O9452内
G65P9460X0.056Y0Z0I0.058J0.044(T1000.DMP.CALIBRATION.)

⑫簡易芯出し 基準面芯出し Y+側キャリブレーション

<補正要領>
コモン変数#550にリングゲージ内径を入力してください。
N1500からメモリー運転し位置決め後、ハンドルでZを降ろしプローブ先端がリングゲージ内を測定できるようにしてください。
再び、メモリー運転で計測を開始して計測後、M0停止まで実行させてください。
G54の機械座標(リングゲージをスモールテスターで計測した座標)と、G55の機械座標(簡易芯出しにより求めた座標)を確認し、誤差量を計算して下さい。
その誤差量をO9452のG65P9460 DMP用キャリブレーションの設定に反映します。
再度計測し、誤差が最小になるように補正値を調整してください。

<例>
G54座標のY座標が−1550.010で、
G55座標のY座標が−1550.055の場合。
O9452のG65P9460内Yに0.045を入力します。
結果の誤差値を反映させて再度計測し、計測結果が最小になるまで繰り返してください。
計算例 :[G54の座標]−[G55の座標]=補正値 [−1550.010]−[−1550.055]=0.045

O9452内
G65P9460X0.056Y0.045Z0I0.058J0.044(T1000.DMP.CALIBRATION.)

⑬簡易芯出し ライトアングル用キャリブレーション設定値について

ダミープレートで求めた値をライトアングル用のキャリブレーション値として代用します。
より高精度な測定結果を求める場合には、イケールにリングゲージを貼付け、キャリブレーションを角度毎に行い設定してください。

<参考例>
ダミープレートで求めた値 G65P9460に設定した X Y Z I Jを
O9452のG65P9468のX Y Z I Jに設定してください。(0°、90°、180°、270°)

G65 P9468 Xx Yy Zz Ii Jj ; ( ライトアングルヘッド用 )

以上